問題だらけの北隆館の原色昆虫大図鑑改訂版
週末は東北の蛾屋の集まり「みちのく会」に出席して、久しぶりの面々と蛾談義をやってきた。その席にニワカガマニアさんが北隆館の図鑑を持ってきてくれたのだが、皆でパラパラめくって絶句してしまった。蝶の部分は全面改定されているようだが、蛾の部分は非常に問題だらけだったからだ。北隆館のサイトには、「蛾類についても学名・分布を中心に内容を全面的に見直しています。」とあるが、中途半端に手を入れてとんでもないことになっていた。たとえばシャクガだと:
・マダラエダシャクの仲間は前の版ではCalopilos属とされてきたが、現在ではAbraxas属に統合されている。したがってCalopilos属とされているものは全種Abraxas属にすべきなのに、一部の種だけが修正されて二つの属名が併記されている。おまけに現在はユウマダラエダシャクの同種とされているホソユウマダラエダシャクがまだ独立種として扱われている。
・フトフタオビエダシャクの学名は、現在妥当とされるEctropis crepusculariaにしてあるが、この種は北米にも分布しているのに抜けており、分布をきちんと見直したとは思いがたい。
などなど。
小蛾類に至っては、もはや目も当てられない惨状。私の専門のカクモンハマキガ族では、細かく見てないが半分くらいは学名や和名が現在の一般的なものになっていなかった(謝辞に私の名前を見つけたが、私自身はノータッチ)。さらには、ホソバヒメハマキになぜかホソハマキの仲間の学名がつけられているなどなど混乱の火種がたくさん。こんな状態の種名をもとに目録などを作られたら、どれだけの混乱が生じるか、考えるだけで恐ろしい。
さらには、ハマキの項にある「小蛾類の脈相(1)」を見ると、Tortrix属の頭文字が小文字になっている誤植がそのままだったりと、単純な誤記すらそのままになっていたり、本当に編集したのかどうかも疑問が残る仕上がりだ。
前回「これから図鑑を買いたい方にとっては選択肢の一つかもしれない。」と希望的観測を書いたが、撤回せざるを得ない。正直、私も買う気が全くなくなってしまった。
