9/18 Conference 1st Day (1)
Conferenceの初日である。午前中は以下の2つのセクションが行われた。
- SESSION 1: GLOBAL ACTIVITIES OF THE BARCODE OF LIFE INITIATIVE
- SESSION 2: DIVERSE APPLICATIONS OF DNA BARCODING
SESSION 1: GLOBAL ACTIVITIES OF THE BARCODE OF LIFE INITIATIVE
ConferenceのChairである科学院のKwang-Tsao Shao氏による開会の挨拶の後、以下の3題の基調講演が行われた。
Ya-Ping Zhang (Chinese Academy of Science) DNA Barcoding in the Genome Era:ゲノムレベルでのシーケンスが容易になった現在、DNAバーコードは同定だけでなく系統推定にも利用できるべきであると講演者は主張した。そこで、クマ科の各種の全ミトコンドリアゲノムの塩基配列を決定し、ゲノム中で、単体での系統推定結果が全ゲノムに基づくそれに近い領域を探索した。その結果、COI, ND5, CYTBをはじめとした領域が良い結果を示した。今後、Tree of Lifeなどの大系統プロジェクトと連携する際や、追加バーコード領域を決定する際の参考になるだろう。
Won Kim (Seoul National University) Biodiversity Research and DNA Barcoding in Korea:韓国におけるDNAバーコーディング関連活動のレビュー。2005年から活動を開始し、現在、DNA Barcoding Research Projectと呼ばれる3年間のプロジェクトを韓国環境科学技術研究所(KIEST: Korea Institute of Environmental Science and Technology)が行っているという。韓国は生物多様性に関する様々なプロジェクトを活発に行っているが、縦割り行政なのでややこしい。
Helida Oyieke (National Museums of Kenya) Barcoding for Taxonomic Problems:分類学の重要性、および分類学的研究におけるDNAバーコーディングの役割と限界について論じた。DNAバーコードは”a tool to compliment traditional taxonomy”であり、新種の発見、形態的に酷似した種の同定、違法商取引される動植物製品・有害生物・侵入生物の同定に利用できる。その一方で、DNAバーコーディングの限界として、それ単体では同定は完結せず他の生物学的情報が必要なこと、多型的な種では同定が困難なことをあげた。
SESSION 2: DIVERSE APPLICATIONS OF DNA BARCODING
まずCBOLの活動の現状が紹介された後、各バーコーディングプロジェクトの進行状況が簡単に報告された。
Scott Miller (Smithsonian Institution, CBOL) Progress by CBOL since London Conference:2005年にロンドンで開催された第1回Barcode of Life Conference以後の活動の総括。ここ2年で、CBOLの参加組織数は4倍(18ヶ国42組織→約50ヶ国160組織)、バーコードの登録数は種数で2.5倍、個体数で10倍(12,700種30,000個体→31,300種300,000個体)になったという。また、BOLD(Barcode of Life Data system)はデータベースや同定支援システムを整備し、GenBankではバーコード用の登録フォーマット(BARCODE)が設定されるなど、インフラ整備も着々と進んでいる。2009年の第3回Conferenceまでには、100,000種、1,000,000個体のバーコード情報の収集と、30分1ドル以内(!)の同定を目指すという。
Yvonne Linton (Natural History Museum London) Mosquito Barcode Initiative (MBI):CBOLによるデモプロジェクトの一つ。現在、世界のカ類2780種のうち390種2217個体のバーコード領域が決定された。グループによってはCOIでは種レベルの解像度が得られず追加バーコード領域が必要だという。
Marc De Meyer (Royal Museum of Central Africa) Tephritid Barcode Initiative (TBI):これもCBOLによるデモプロジェクト。ミバエ類の500個体をすでにバーコーディングし、今年中に重要な害虫を含む属の半分を、来年に全部をバーコード化する予定だという。
Mark Stoeckle (The Rockefeller University) All Birds Barcoding Initiative (ABBI) Update:鳥類のバーコーディングプロジェクト。こちらは世界の約10,000種のうち1,800種、9,000個体がバーコード化されている。また、捕獲した個体の血液をDNAサンプルとして採取し、その際に撮影した写真を証拠標本代わりにする(e-voucher)ことができないか検討しているという。日本でも国立科学博物館と山階鳥類研究所がABBIへの取り組みを始めており、日本の鳥類もこれから順次バーコード情報が整備されるだろう。
Robert Hanner (University of Guelph) Fish Barcode of Life Initiative (FISH-BOL):魚類のバーコーディングプロジェクト。これまでに4,000種、20,000個体がバーコード化された。日本でも、東大の西田さん、科博の松浦さん、千葉中央博の宮さんを中心とした魚類ミトコンドリアゲノムプロジェクト(MitoFish)が情報提供する形でプロジェクトが進められている。関与している研究者は160人以上で、バーコーディングプロジェクトとしては大所帯だ。
Mark Bagley (US Environmental Protection Agency) DNA Barcodes for Assessment of the Biological Integrity of Aquatic Ecosystems:米国環境保護局の環境モニタリング法の一つとして、水生生物、特に水生昆虫(カゲロウ目・カワゲラ目・トビケラ目)のバーコード化を進めている。今後、形態と分子の情報を統合し、環境アセスメントに活用する方法を検討していくという。
Ann Bucklin (University of Connecticut) Barcoding marine biodiversity:動物プランクトンをバーコード化するプロジェクト。Census of Marine Zooplankton (CMarZ)では、1,500種がバーコード化されており、2010年までにプロジェクトを完成させるという。今後様々な形で利用されることになるだろう。なお、バーコード領域ではないが、日本でもウニ幼生にDNAに基づく同定法が利用されている(生態学会大会第53回・第54回自由集会)。
