レポート

9/18 Conference 1st Day (2)

1日目午後は以下の2つ。

  • SESSION 3: HOW DOES BARCODING WORK AND HOW WELL DOES IT WORK?
  • SESSION 4: HOW CLOSE ARE WE TO HAND-HELD, FIELD-FRIENDLY, OR TABLE-TOP BARCORDERS?

SESSION 3: HOW DOES BARCODING WORK AND HOW WELL DOES IT WORK?

バーコーディングの実践的な側面に焦点を当てたセッション。Hebertの基調講演に続き、データ操作、フィールドサンプリング、博物館でのサンプリングの実際例、および分類学的研究への利用例が紹介された。

Paul Hebert (University of Guelph) Toward a Barcoded World:「DNAバーコーディングの父」Hebertによる講演。DNAバーコードは、種同定・進化を知る手がかり(probe)であり、分布の解明などに役立つと指摘した上で、「バーコードでどれだけ種同定できるか力」「分類が進んでいるグループで得られた基本原則を、分類が進んでいないグループにどれだけ適用できるか」を知ることが重要だと指摘した。また、バーコーディングに関する5年間の大規模プロジェクトInternational Barcode of Life Project (iBOL)が準備中だという。50万種、500万個体のバーコード化を目指しており、コストは1億5000万カナダドルを見込んでいる。

Robert Hanner (University of Guelph) The BARCODE Data Standard: Enabling Molecular Diagnostics for Biodiversity:DNAバーコード情報のデータ形式の標準化に関する報告。策定されたBARCODEデータの標準形式では、500bp以上のシーケンス・波形ファイル・プライマー配列・証拠標本への参照を必須とする。BOLDはこの形式をサポートしており、CBOLとGBIFはBARCODEデータのオンライン登録システムの作成を進めているという。また、International Nucleotide Sequence Database Collaboration(INSDC; DDBJ/EMBL/GenBank)は、CBOLと協働してバーコード塩基配列ライブラリとしての役割を担い、バーコード情報のための予約語BARCODEを追加するだけでなく、GenBankにより新しい登録ツールも開発されている。さらに具体的な情報は後のsessionで紹介された。

Christopher Meyer (University of California Berkeley) Barcoding in all-species inventory - the Moorea Biocode Project (MBP):バーコーディングの目標を達成するには、様々な分類群を網羅的にサンプリングすることが必要になる。本講演はそのサンプリングの最前線の例で、仏領ポリネシアのモーレア島を舞台に、ある生態系の構成生物を全てバーコード化することを目的としたプロジェクトについて。スケジューリングから、同定・組織採取・データベース化といった各作業のマネジメントの現状と問題点が紹介された。

Andrew Mitchell (NSW Department of Primary Industries, Australia) Barcodes bridge the old and the new: use of museum specimens to identify molecular operational taxonomic units in larvae of scarab beetles (Coleoptera: Scarabaeoidea):農業害虫に焦点をおいたコガネムシ上科のバーコーディングの取り組み。この研究で興味深いのは、被害を与えている幼虫のバーコードを決定し、それを博物館に所蔵されている同定済み成虫標本のそれと比較している点である。博物館の古い標本はDNAの断片化が進んでいるため、完全なバーコード領域はなかなか得られないが、5′側の半分であれば大部分の種から塩基配列を決定できたので、それをreference barcodeとしたという。

Sarah Samadi (Museum National d’Histoire Naturel, Paris) DNA barcode, type specimens and species delimitation in the genus Eumunida:ワラエビ科を例にした、DNAバーコーディングを分類学で利用した実践例。分類学的研究の一環として、タイプ標本を含む個体をバーコード化し、形態とともに論じている。このような方法は、形態・生態・分子などの異質な情報を総合的に利用して分類学的研究を進めるIntegrative Taxonomy的なアプローチで特に有効であるとした。

SESSION 4: HOW CLOSE ARE WE TO HAND-HELD, FIELD-FRIENDLY, OR TABLE-TOP BARCORDERS?

CBOLによるバーコーディングのパンフレット“Barcoding Life: Ten Reasons”には、「バーコーディングの未来像」として、携帯式の”Barcoder”の想像図が掲載されている。それを使って「持ち運びが可能で、サンプルを入れると、いつでもどこでも瞬時に同定結果とその種に関する情報が得られる」ようになるらしい。それはまだ先の話だとしても、このセッションではそんな究極の目標へのステップとなるような技術に関する話題が提供された。

Tom Evans (New England Biolabs) In vitro repair enhances amplicon recovery and accuracy from damaged DNA:損傷したDNAをPCRの前に酵素を利用して修復する技術PreCRの紹介。バーコーディングには古い標本からDNAを取ることも多く、水分・酵素・紫外線によるDNAの損傷がしばしば問題になるため、看板通りなら有用な技術であろう。すでにPreCR Repair Mixの名前で商品化されているが、これってどの程度使われているんでしょう?

Natalia Ivanova (University of Guelph) Express Barcodes: Racing from Bugs to Identifications:バーコーディングにおけるDNA抽出から同定までの所要時間を短縮するプロトコルの紹介。凍結乾燥標本を使い、全工程を2時間以内に完了できるという。詳細は以下の通り:抽出(アルカリ熱抽出)5分、PCR(Z-Taq利用)25分、シーケンス反応25分、精製10分、シーケンス(キャピラリ)45分、同定(BOLD同定システム)5分。

Youn-Ho Lee (Korea Ocean Research and Development Institute) Development of a DNA barcode-based DNA chip for identification of marine organisms in the East Sea of Korea
Kochzius Marc (University of Bremen) Fish and Chips: microarray-based DNA-barcoding of European Marine Fishes
この2つの発表は互いに関連しているので一度に紹介。特定の分類群の同定を目的として、マイクロアレイを利用した”DNA chip-based barcoder”を開発する試み。これは、対象となる各種に特異的な塩基配列をプローブとしたマイクロアレイを作成し、ハイブリダイゼーションのパターンによって各種を同定する。前者では韓国周辺のメジャーな魚類・貝類・甲殻類をターゲットとしたCOIのマイクロアレイを、後者ではヨーロッパ産の魚類をターゲットとしたCOI, cytochrome b, 16S rRNAのマイクロアレイを開発し、同定に利用できることを示した。

Mostafa Ronaghi (Stanford Genome Technology Center) Portable Pyrosequencing device for DNA sequencing:シーケンサの小型化、高性能化に関する最新技術の紹介。PyrosequencingシステムにCMOSセンサーあるいはdigital microfluidicsを利用することで小型化ができるという。さらに、マイクロアレイ等のハイブリダイゼーションを利用した手法に関して、利用する機器のコンパクト化を期待できるnanoporeやnanorodなどの技術についても紹介した。

シーケンス技術の発展により作業の簡略化・解析の高速化・機器の小型化などが進んでおり、CBOL2009年までの目標として掲げた「30分以内、1ドル以内の同定」も夢物語ではないように感じた。2009年にどんなものを見ることになるのだろうか。

これでConferenceの一日目は終了。この夜はTaipei Grand Hotel(圓山大飯店)で welcome receptionが開催された。ちょうど台風が接近していたので、高台にある会場玄関でバスを降りたら吹き飛ばされそうになったり。私はと言えば、台湾の蛾の研究者でconferenceでも忙しく働いているShen-Horn Yenさんの学生とずっと虫の話をしていたような。帰りのバスで隣に座っていた方に話をしたら何とuBioのIndra Neil Sarkarさん。彼もRubyistだったのでrubyスゲーとか言いながらホテルへ。てことはuBioのフロントエンドはrubyなのかあ。