9/19 Conference 2nd Day (1)
台風は行ってしまったのだが天気は回復せず。この日は最初から死亡率の高そうな話題なのだが果たして生きて帰れるのかどうか。
それはともかく、午前中はSESSION5と6。
- SESSION 5: ANALYTICAL METHODS FOR BARCODE DATA.
- SESSION 6: CASE STUDIES I. INTEGRATIVE TAXONOMIC STUDIES USING DNA BARCODING
SESSION 5: ANALYTICAL METHODS FOR BARCODE DATA.
バーコーディングにユーザーが要求するのは、塩基配列に基づく迅速かつ正確な同定結果であり、それに応える同定システムを構築する必要がある。現在は、類似性検索にBLASTを、クラスター作成にNJを使った同定システムがBOLDによって提供されているが、さらに同定を効率化するために様々なアプローチからの研究が進められている。Michel Veuille( Museum National d’Histoire Naturel Paris)のイントロに続き、いかのような講演が行われた。
Frederic Austerlitz, (Universite Paris-Sud) Comparing phylogenetic and statistical classification methods for DNA barcoding:系統学的アプローチ(NJ, PhyML)と統計学的アプローチ(Classification And Regression Tree, Random Forest, Support Vector Machines, Neuronal Classification Methods)による同定法の紹介とこれらが有効な条件の探索。統計学的アプローチは各種のサンプルが多く塩基置換率が低いときにより有効、系統学的アプローチはその逆の時により有効だという。
Pavel Kuksa (Rutgers University) Fast Barcode-Based Species Identification Using String Kernels:String Kernel法を用いた同定の試み。Kernel法は構造化データの分類に使われるもので、非線形な情報を線形構造に変換しする方法である。線形構造にし多多次元空間に配置された塩基配列情報と種名情報をもとに、種の「しきい」を学習(Support Vector Machines)により決定し同定に用いる(さっぱりわからず書いてるが)。ともかく、アラインメントが不要であること、計算量の少ないString Kernel法を用いるとこれまでの方法よりも100~200倍速く正確であること、がウリらしい。
Giovanni Felici(Consiglio Nazionale delle Ricerche)Species Classification with Optimized Logic Formulas:同定するのに必要な塩基配列の違いを論理和標準形(Disjunctive Normal Form)を使って記述し、同定に利用する試み。整数計画法(Integer Programming)を利用して必要な最小限のデータセットの選択(Feature Selection)を行うことで、良いパフォーマンスが得られるという。しかし、塩基配列決めうちなので、分類群のランク等で階層化して標準化しないと、同一の塩基配列がライブラリにない場合は対処が難しいように感じた。
Damon Little (The New York Botanical Garden) DNA Barcode sequence identification incorporating taxonomic hierarchy and within taxon variability:ちょっと不思議なアラインメント不要の計算法。Sequence IDentigication Engines(SIDE)と名付けられたこの手法は、pretextおよびposttextと呼ばれる、ある塩基を基準にそれより前と後の数塩基(間は少し開ける)を切り出し、それを固まりとしてindex化する。この作業をを塩基を一つずつずらして繰り返し、参照データとする。さらに、各データセットを比較して、よりユニークなものに大きく重み付けをする。この参照データで未知のサンプルの塩基配列から作成したindexをスコア化し同定する。
Bogdan Pasaniuc (University of Connecticut) A Comparison of Algorithms for Species Identification based on DNA barcodes:これまでに提唱された様々な方法論の様々なデータセットによる比較。特に、巨大なデータセットに対するパフォーマンスに焦点を当て、様々な距離法、系統推定アプローチを比較している。また、種数や各種のバーコード数の影響もしらべ、1種あたりのバーコード数が多くなると精度が上がり、種数が多くなると精度が下がるという。
このセクションは敷居が高く「死亡率」も非常に高かったようだ。「こういうことはワークショップでやってくれ。我々は理論ではなくて機能が欲しいだけなんだ」という不満もあったりなかったり。また、多くの手法が大きな意味で全体的類似度を利用しているので表形学の亡霊のように感じる人もいるだろう。あとは、「私はわからなくなってしまった。あなた方にとって種とは何ですか?」という質問に誰かが「あなたの考えている種と同じです」と答えあちこちから笑いが漏れていたことくらいしか覚えていない。
SESSION 6: CASE STUDIES I. INTEGRATIVE TAXONOMIC STUDIES USING DNA BARCODING
“Integrative Taxonomy”とは、今後の分類学のあり方として、形態・生態・分離情報など、異質な情報を「統合」する形になるべきだとする考え方のことで、最近の論文で見かけるキーワードの一つである。このセッションでは、バーコーディングがIntegrative Taxonomy的な分類学的研究で果たす役割として、実際の研究例が紹介された。
Biff Bermingham (Smithonian Tropical Research Institute, Panama) Barcoding, Biogeography and Evolution in the Tropics of the New World:バーコード情報を利用した研究として、カリブ諸島の鳥類・パナマの魚類およびプロットの植物フロラの系統生物地理学的研究への適用経過が紹介された。特に鳥類についてはABBIプロジェクトによってカリブから西インド諸島まで多くの種のバーコード領域が網羅的に決定されており、情報は限定されるとはいえ有用な情報だと言えるだろう。
Benoit Dayrat (University of California) Barcoding and its place in Integrative Taxonomy:今こそが分類学者にとっての”wonderful time”であり、現在のα-taxonomyの専門家が激減し「分類学の危機(taxonomy crisis)」といわれている今、分類学は様々な情報を統合したIntegrative Taxonomyへと変容しなければならないと主張し、そのためには研究者の意識改革が必要だとした。このコンテキストでは、DNAバーコーディングは膨大な分子情報を分類学的研究を与える点で重要であり、今後は分類学的研究に組み込まれるべきであるとした。
Rodolphe Rougerie (University of Guelph) Sphingids and Barcodes:The New Taxonomy:鱗翅類はDNAバーコーディングの現在の主要なターゲットであり、All-lepsプロジェクトによって世界的・地域的・地点的な各スケールによる重点キャンペーンが行われている。本講演は、世界のスズメガ科全種のバーコード化を目指す世界的キャンペーンの概要とその成果の報告である。現在1241種(+339亜種)のうち93%(1440種・亜種、14624個体)がバーコード化され、これまで見過ごされてきた種も400種ほど見つかった。また、バーコード全体の領域が決定できない以前のholotypeからも、その一部の128bp(mini barcode)の塩基配列を決定することで、種名の対応関係を決定する証拠として利用できたという。
Mark Siddall (American Museum of Natural History) Bamboozled by bloodsuckers: barcoding backs biodiversity:ヒル類の系統・分類学的研究における分子情報の役割とDNAバーコードの活用法。分子情報が分類に与えた影響の一例として、ヨーロッパで外傷の治癒のため医学的に利用されているヒルはこれまでHirudo medicinalisと同定されてきたが、実際は3種が混じっており実際に利用されているのは真のH. medicinalisではないことが報告された。種名によって示されている医学的・生化学的なデータがどの種を指し、3種がどのように違うのかを知ることは、有用生物として利用していく上で重要であろう。とはいえ、内容よりもカラフルなヒルの写真のインパクトの方が大きかったかもしれない。
