現生の蝶や蛾の仲間でもっとも原始的な仲間がコバネガの仲間だ。コバネガは口がストロー状に進化する前の仲間の一つで、いわゆる咀嚼できる顎を持ち、種類によっては花粉を食べる。世界に広く分布しており、120種が知られている。日本でも北海道から九州までから記録があり、2属10種が知られている。大図鑑には9種が載っていて、その後、長年コバネガを研究している橋本里志さんが房総半島からカズサヒロコバネを新種記載され計10種となった。
その橋本さんが日本産コバネガをまとめたモノグラフを発表された。
Hashimoto, S., 2006. A taxonomic study of the family Micropterigidae (Lepidoptera, Micropterigoidea) of Japan, with the phylogenetic relationships among the Northern hemisphere genera.
Bull. Kitakyushu Mus. Nat. Hist. Hum. Hist., Ser. A, 4: 39-109.
(橋本里志, 日本産コバネガ科(鱗翅目)の分類学的研究と北半球の属間の系統関係について
. 北九州市立自然史・歴史博物館研究報告 A類 自然史 第4号)
この論文で日本産は4属に整理され、7種が追加され、計17種となった。コバネガは移動性が小さいのか、蛾の中では地方ごとの種分化が顕著なので、カズサヒロコバネのように未記録の場所で採集すると新種になることが多い。今回も、分布空白域だった新潟から新種が4種見つかったのはさほど驚くことでもないのかもしれない。
この論文の入っている「北九州市立自然史・歴史博物館研究報告A類自然史 第4号」は、博物館のホームページから購入できる。「インフォメーションメニュー」から「刊行物案内」を見ると、注文方法が書いてある。「自然史系刊行物」には4号の記載はまだないがすでに注文は可能とのこと。定価2200円+郵送料350円。
コバネガは見つけようと思わないと見つからない仲間だ。発生時期は仲間によって多少違うが4月末から6月にかけて。見つけやすいNeomicropteryxとその仲間は、幼虫がジャゴケというコケを食べており、成虫は晴れている昼間、とくに午前中、トビケラに混じってジャゴケの上スレスレを弱々しく飛んでいる。スイーピングで採れるが慣れてくると止まっているのを見つけ採りできる。初めのうちはトビケラと区別が付きにくいが、触覚が太くて、全くふるわせていないのが目安になる。植林の中の沢沿いや、ジメジメした崖で水がしたたり落ちているところなどがおすすめポイント。
どなたか、分布の空白域を埋めてみませんか?佐渡や対馬が気になるこのごろです。
MothBlog+ Archives [蛾]
日本産コバネガの分類
月刊むしの回顧録
むし社が発行する「月刊むし」といえば、一般に売られている昆虫に関する雑誌の草分けだ。様々な特集記事が組まれているが、「短報特集号」と並ぶ年度行事に「前年の昆虫界を振り返って」がある。蝶・蛾・甲虫・トンボの各グループについて、前年の動きをまとめたものだ。それぞれ大御所の方々が執筆を担当されており、蛾については昨年まで杉繁郎さんが担当されてきた。その杉さんから執筆者が交代することになったのだが、なぜだか私にお鉢が回ってきてしまい、最近はそちらの資料集めやら原稿書きやらでかなりの時間を費やしていた。分類についてはList-MJなどである程度チェックしているのだが、それ以外はメモ書きなど何もないので、雑誌を見ながら記事をピックアップしたり、色々な人に話を伺いつつ原稿を作ってきた。ようやく図も揃い、原稿が最終段階になった。
今回、メーリングリストのgamlと、ML会員専用のwiki(非公開)を併用して、みんなで回顧録を作ろうという企画を試行してみた。これは、回顧録の執筆をお引き受けしたときから頭にあったもので、原稿を作る前の段階、原稿を作ってからのチェックと、つねにgamlの方々と一緒にやってみたが、意見やフィードバックがあり大変ありがたかった。次の機会があるのなら、もっと色んな知見を持ち寄って、みんなで作り上げられればうれしい。
今までの蛾界の回顧録は大蛾類がメインで小蛾類はほとんど扱われていなかったが、自分自身が小蛾好きなこともあり、えこひいきはいかんやろと小さな蛾の知見もたくさん盛り込ませてもらった。昨年まで執筆されていた杉さんに原稿をお見せしたところ、「こういう小蛾類の記事はどれくらい喜んで読んでもらえるのだろうか」、と一言。たしかに。小蛾は今でもマイナーな存在で、蛾屋の集まりでもミクロ分科会(?)ははじっこで少人数でやっているのが現状。だからこそ、小さな蛾も色々話題があることをアピールして、少しでも小さな蛾に興味を持つ人が増えてほしいという思いがある。
ということで、月刊むし5月号をお楽しみに。
フチグロトゲ健在
この土日は国際基督教大学で第3回昆虫DNA研究集会という会が開催されており、土曜はそちらに行っていたのだが、日曜の完ぺきな天気予報に誘われ、午前中に飛ぶ異色のフユシャク、フチグロトゲエダシャクの様子を見に行くことにした。暖かくて風のない快晴の午前中がベストなのだ。
前日だというのに連絡のついでに話をしたら総勢5名が集まり、ポイントに行けば網を持っていたのが2名。みな考えることは同じと言うことか。♂はかなりたくさんの個体が飛んでいた。本種の観察の醍醐味は配偶行動の観察。低く飛んでいる♂を追いかけて、クルクル回ってポンと落ちれば、そこには♀がいて交尾行動を見ることができる。低空飛行は♀の探索、クルクルポンは♀の出すフェロモンへの反応なのだ。今回も、いくつかの♂が低空飛行していたのだが、追いかけていくとくるくる回らずどこかへ飛び去ってしまう。♂より遅れて羽化(といっても翅はないわけだが)する♀はまだほとんど発生していないようだった。
2年前に書いたことがとおり、この種類は昔は珍品だったが、今では条件の良い河川敷なら結構いることがわかってきた。首都圏でも、笛吹川に多摩川水系、相模川水系など、あちこちで見つかっている。とは言っても、河川改修が入ると、♀の移動が困難なことが多く復活はなかなか難しいと思う。工事などの入っていない河川敷ならチャンス有り。あと半月は狙えますよ。
蛾類学会秋の例会
明日10/8土曜日、13:00から大久保の国立科学博物館新宿分館にて蛾類学会秋の例会が開催されます。私は裏方でばたばたやりつつウロウロしてますので、どうぞお越し下さいまし。
プログラムや参加費等詳しい情報は蛾類学会公式ページをご覧下さい。
4月の蛾界
GW前半は数人で長野でカバシャクやマイコトラガと戯れ、後半はそのしわ寄せでずっとパソコンの前の生活です。
今回はサボっていた分をむかしの蛾界ニュースのノリでダイジェストに。
「岩手の大蛾類」発行ー奥俊夫さんが発表された「岩手県の小蛾類」は小蛾類(メイガ等を除く)1234種を記録した未曾有の目録だったが、今度は奥さんとペアを組まれていた土井信夫さんが「岩手県の大蛾類 付 蝶類リスト」を発表した。大蛾類(ミノガ、メイガ上科等も含む)2116種+蝶130種という巨大な目録で、足しあわせると記録された岩手県の蛾類は1県としては前代未聞の3350種。「小蛾類」「大蛾類」とも入手しづらいので、購入しやすくなるよう交渉中。
月刊むしの回顧記事-まあ、これが今回のタイトルの元ネタなわけだが。月刊むし毎年恒例の回顧記事であります。蛾界は前回までに引き続き杉繁郎さんが担当された。蛾類通信や誘蛾燈が中心なのであまり目新しい情報はないもののコンパクトにまとめられています。小蛾類は完全に無視されているのがちょっぴり残念。
世界のハマキガの種名カタログ刊行ーApollo booksからWorld Catalogue of Insectsというあるグループの全世界の属名種名をまとめたカタログが発行されているが、先日5巻としてハマキガ編が刊行された。10,000以上の学名が扱われていて、厚さが5.5 cmという大きな本である。世界のハマキガの専門家がよってたかって作っており、日本からはシンクイヒメハマキ族の第一人者の駒井古実先生が編者に名前を連ねている。これから先のハマキガ研究のスタンダードになるはず。List-MJもこれにあわせてかなり学名の変更や修正をすることになりそうだ。
蛾類通信233号-沖縄から記載された新種カズナリコブガからスタート、幼虫と成虫、マクロとミクロ、北と南がバランスが取れている面白いラインナップです。「わが友 いもむし」の松浦さんがメンガタスズメとクロメンガタスズjメの幼虫を彩色画で紹介しているのが印象に残った。
赤坂御用地と常磐松御用邸の動物相-都区内にあるこの2ヶ所の動物相をまとめた国立科学博物館専報39号が完成しました。蛾類は私も協力しています。皇居を含め3ヶ所の蛾類相の比較や、マレーズトラップによる調査結果などが見所でしょうか。ミクロで日本新記録も出ています。たぶん、普通種で名前が付いていなかったものでしょうが、ともかくめでたいです。科博や書店から購入できるようになると思います。
あと蝶と蛾も来ているのだが山積みになっている資料に紛れて出てこない。ハモグリガの新種や中国のカザリバガの記事があったと思うのだが。
