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対馬の蛾

対馬というのは面白い島だ。大陸と日本本土の間という立地条件にあるため、大陸から対馬まで分布していて日本本土にはいない種がいたり、台湾と対馬という分布をする種がいたりする。対馬固有の生物も多く、ツシマヤマネコはあまりにも有名、クワガタやカブリモドキも人気が高いし、わかむしMLでも最近対馬の話題でやりとりがあった。
対馬の蛾もやはり面白い。対馬の蛾は、蛾の大コレクターだった渡辺徳氏が長年調べられて、多くの新種・新記録種が記録された。それらは大図鑑に載っているわけだが、その後別種と分離されたり新たに見つかった種も多い。たとえばマダラガなら、オキナワルリチラシに近いツシマキモンチラシ(紀伊半島にもいる)やウォンサンスカシクロバなどがいる。最近ではオビカレハに近縁なシカタハレハという種が見つかった。日本では対馬でしか採れていない。数年前の蛾類学会総会で採集された四方氏(和名はこの方に因む)からこの蛾を見せられて唖然としたのを覚えている。対馬に行った人たちも標本箱を探したけれど、普通種のオビカレハなんて見向きもしていなかったせいか、誰も採っていなかったという裏話もある。
対馬のシャチホコガは結構人気がある。早春に出るトビネシャチホコや春のツシマクロモンシャチホコ。夏にはフサオシャチホコもいるし、ゲンカイハガタが最も確実に採れるのは対馬だ。私は1回だけ対馬に行ったことがあるのだが、ツシマクロモンシャチホコ狙いの人たちにくっついていった時だった。ただ、私は小蛾類狙いだったので昼間ツヤコガをどっさり採って一人で喜んでいたが。ツシマクロモンも何とか1個体採ったが油がでてしまった。
最近、Yohboの対馬の昆虫館のYohboさんが膨大な量の蛾の写真を公開されている。地元の方だからこそできる仕事だと感心する。たくさんありすぎてきちんとは見てないのだが(申し訳ない)びっくりしてのけぞった写真もある。Web図鑑対馬の蛾類では上で書いたシャチホコガはすべて見られたりもする。Yohboさんのblogではちょっと前にオオシモフリスズメの画像が。私が行ったときも一つつかまえて喜んでいたら、あとからあとから飛んできて、ついには白布がオオシモフリだらけになってしまった。おそらく3桁飛んできたと思う。
そんな中で、面白いと思ったのがトビネシャチホコだ。新属新種として記載された種で、早春に出現する。近縁種は大陸と台湾にいるらしいが、幼虫は属としてわかっていなかった。そんな中、Yohboさんが♀から採卵されて、昆虫フォーラムのPhasmidさんたちがトビネの飼育を試みているそうだ。Phasmidさんのblogで途中経過が報告されていて、3齢まで大きくなったそうだ。幼虫はナラ科の新芽がお好きとのこと、飼育成功をお祈りしています。うまくすれば野外で幼虫が見つかるかも。
対馬の蛾はまだまだ情報不足の種も多い。一番の大物は、未だ幼虫しか見つかっていない大陸系のオナガアゲハモドキだろう。何人も挑戦しているのだがなかなか難物なようだ。小蛾類に至っては情報がほとんど無い種が大半。対馬固有のツシマキモンヒメハマキやツシマクロヒメハマキ、いれば新種間違い無しのコバネガ等々、探したいものがいくらでもいる。今年は対馬に行く機会がありそうなので、なんとか狙いたいものだ。

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2005-4-10 1:37 AM | |

各都道府県の昆虫目録

その種がどこに分布しているのか。この素朴な疑問に対する答えを得るのは以外に難しい。なぜなら、記録はあちこちの研究会誌や同好会誌、あるいは市区町村史や調査報告書などにパラパラと出るので把握が難しいからだ。そんなときの強い味方が、そのような報告を集めた各都道府県別の種名目録だ。
目録は、多くの場合地元の昆虫同好会などのメンバーが中心となって作られている。関東では、埼玉昆虫談話会が作成した「埼玉県昆虫誌」が刊行され、1999年の追補までで9360種が記録された。こういう目録が出ると、その後「載っていないこんなのを持っている」あるいは「採った」という記録がどんどん日の目を見る。その結果、2004年9月時点で9826種が埼玉県から記録されているという。栃木県の場合には、自然環境調査研究会という公の調査によって「とちぎの昆虫」が発行され、これも約1万種が記録された。さらに、神奈川昆虫談話会創立50周年を記念して昨年出版された「神奈川昆虫誌」では10867種が記録された。良く探すといるものなんだなあと痛感した。
さて、埼玉と神奈川にはさまれた東京。虫屋は多いのだが地元に根ざした虫屋は非常に少ない。東京都には昆虫談話会は存在せず、いくつもの同好会が別々に動いているように思える(私もほとんど関わっていないため把握もしていない)。また、東京都には栃木のような自然環境調査をやる気配がない。そのため、昆虫目録を作ろうという動きはほとんど無かった。しかし、最近になって、有志により 東京都本土部昆虫目録作成プロジェクトが動き始めている。東京都には本土だけでなく、伊豆諸島や小笠原なども含まれるが、このプロジェクトでは本土のみを対象とし、既知の文献データを収集して、「暗黒地帯」とも言われる東京都の昆虫リストを作成している。東京都にはシャクガの一地点確認種数が最も多いという高尾山のようなとんでもない場所が含まれているし、0メートル地帯から2000メートルを超える雲取山まで、環境は意外と多様なため種類数もそれなりに多いと思われる。今後の発展に期待しています。なお、このプロジェクトは東京昆虫目録(TKM)と訳すそうだ。
蛾の確認種数は、どれだけ小さな蛾をきちんと採集して同定するのかで大きく変わってくる。蛾の一県確認種類数で一番多いのは、おそらく岩手県の2978種。したがって、一県で3000種越えも不可能ではないだろう。

2005-3-22 12:22 AM | |

帰化した蛾2題

海外から人為的に侵入してきた蛾としては、アメリカシロヒトリがあまりにも有名だ。蛾に詳しい人なら、シバツトガやニセタマナヤガと言った名前もご存じかもしれない。
最近、クロテンオオメンコガ(Opogona sacchari)という種に関する論文が日本応用動物昆虫学会の和文誌に掲載された(目次)。この種は海外ではバナナ・モスなどの名前で知られるそうで、バナナのほか、多くの農作物につき、世界各国に入り込んだ害虫だ。この種は1990年頃から日本に入り込み、最近では各地の温室などで観葉植物や果樹を食べているのが見つかりはじめた。現状では温室などの限定された空間でのみの発生だが、沖縄など暖かい地域では野外でも発生するかもしれない。成虫は非常に地味で、前翅の端に黒点が一個あるものの特徴がない。成虫と幼虫がこちらのサイトに出ている
一方、日本ではリンゴなどの果樹害虫としても知られるミダレカクモンハマキが10年ほど前にアメリカに侵入したという論文も見つけた(参考)。この種は日本をはじめ近隣諸国に分布しており、日本から入ったかどうかはわからない。しかし、アジア原産のこの種が今後アメリカでどのように振る舞うのか、今後の動向を見守りたい。

2004-7-3 1:07 AM | |

画像・蛾像

自分がマジメに調べようとしているハマキガの調べものをしていて、Tortricid.netというサイトを見つけた。「世界のハマキガ図鑑」を目指すサイトだという。Creditsをみると、Powell, Brown, Horakなどのハマキガ分類の巨頭がそろい踏み。画像の方も、スミソニアン所蔵の全タイプの写真が見られるようになっており、さらに多くの種の画像もある。いやーまいった。そのうち参加させてもらおうかな。
最近は図鑑として使えるレベルのサイトがかなり増えてきたが、イギリスのUKMothsがやはり出色の出来だろうか。蚊よりも小さいモグリチビガまでよくフォローしてあるし、短い説明文が付いているのも嬉しい。今回はさらにBritish Leaf Mining Faunaというのもみつけた。葉っぱに潜る虫の潜り跡の図鑑。各樹木ごとに潜り跡による種までの検索表まで付いている。ハモグリバエから甲虫まで調べられるのも良い。
他にもたくさんの蛾を扱っているサイトがあると思うが、あまりまわっていないので把握していない。特に充実しているサイトがあったら教えてください。

2004-6-11 11:22 PM | |

難解カラスヨトウ・追補

昨日の続きを少々。
掲示板にも書いたが、幼虫の区別点の書き方が良くなかったので改めて今までの知見をまとめてみる。
シマ:胸脚はまだら。腹部の気門は内側まで黒。
オオシマ:胸脚は黒?(未確定)腹部の気門の内側まで白いが、黒いこともある。
ナンカイ:胸脚はまだら?(未確定)腹部の気門の内側まで白い。
これじゃ区別できないじゃないか?と思われた方、正解。胸脚も気門も変異があったり、網羅的に調査していなかったりで、安定した差なのかは未確定な上に個体差もある。そのため、ある程度の目安にしかならないのが現状だ。区別点を確定させるには、親から採卵して飼育したり、幼虫をたくさん採ってきて飼育羽化させたりして、地道にデータを増やすしかないだろう。
今回あげた3種が含まれるカラスヨトウ属(Amphipyra)は、かなり大型で目立つグループなのに、なぜか大図鑑以後に3種も増えている。1種はナンカイ。ユワンカラスヨトウは奄美大島から発見された種で、カラスヨトウと外見では区別できないが交尾器の差は大きいと言う。最後の1種、ムラマツカラスヨトウは北海道で発見された種で、メリハリのなくなったオオシマカラスという雰囲気の種のようだ(フィンランド産)。
手元にあった「韓国のヤガ図鑑」のAmphipyra属の項を見ると、「シマカラス種群の分類はかなり困難」ときっちり書いており、問題点が提起されている。ここまでくると本当の専門家の世界になってしまうわけだが、海外産も加えると物事はより混沌としていると言うことまでは理解できた。韓国にはオオウスヅマカラスヨトウの地色がほぼ真っ黒になったような近似種Amphipyra jankowskiiというのがいるそうだが、日本にはいないものか。対馬と250kmしか離れてない済州島にもいるというのだが。

2004-6-10 12:39 AM | |